適切といわれる飲酒量をご存知でしょうか。
厚生労働省は、純アルコール量とアルコール分解時間を把握するためのWebツールをリリースしました。
自分に合った飲酒量を知り、お酒との付き合い方を考え直してみてはいかがでしょうか。
あなたの飲酒を見守る「アルコールウォッチ」
厚生労働省では、依存症の理解を深めるための普及啓発事業にて、純アルコール量とアルコール分解時間を把握するためのWebツールをリリースしました。
飲んだお酒の種類と量を選択することで純アルコール量と分解時間が把握できます。飲酒や飲酒後の行動判断のために活用してみてはいかがでしょうか。
アルコールウォッチ(依存症の理解を深めるための普及啓発事業特設サイト)
〈ツールのイメージ〉
アルコールは食べながら飲むことや、薄めて飲むことが推奨されます。
アルコールの分解能力は性別、体重、年齢、代謝能力の違いにより個人差があります。自分の適量と体調を考えてお酒を飲むようにしましょう。
アルコールの吸収と分解
飲酒した際、飲んだお酒に含まれるアルコールの大半は、小腸から吸収され、血液を通じて全身を巡り、肝臓で分解されます。アルコールの分解には、体内の分解酵素と呼ばれる物質等が関与しています。体質的に分解酵素のはたらきが弱いなどの場合には、少量の飲酒で体調が悪くなることもあります。
一般的には1時間で分解できるアルコールの量は「体重×0.1g程度」とされています。
アルコール量の計算式 お酒の量(ml)×[アルコール度数(%)÷100]×0.8
体重60㎏の場合「60㎏×0.1=6g」になるので、純アルコール20g(例:度数5%のビール500ml)が体から抜けるまでの時間は3~4時間程度になります。
胃潰瘍や胃がんで胃を切除した人もすぐにアルコールが小腸まで流れ込むため、ビール1缶(350ml)相当の飲酒実験では胃切除前に比べて血中アルコール濃度が約2倍になると報告されています。
アルコールは体内の水分のある所に拡散して分布します。女性は平均的な体重も軽いうえに体脂肪率が高く総水分量が少ないので、男性と同じ量のアルコールを摂取すれば血中アルコール濃度が高くなります。肝臓の大きさにも個体差が大きく、飲酒後の血中アルコール濃度の個人差が大きい背景です。
アルコール関連問題
アルコールに関係した問題の全てはアルコール関連問題と呼ばれています。
不適切な飲み方は、健康を害するだけでなく、飲酒運転など社会的問題を引き起こすこともあり、飲酒は社会と密接な関わりがあります。
また問題は飲酒する当人に限らず、当人を取り巻く周囲の人々や親の飲酒の影響を受けた胎児や子どもなどにも広がっています。
飲酒量が増えるに従って、問題の数と重症度は増えていきます。
日本では、近年まで飲酒量が増加し、それに伴い様々なアルコール問題が生じてきました。多量飲酒は大きな社会問題となっています。
引用:eーヘルスネット わが国の飲酒パターンとアルコール関連問題の推移
健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて
厚生労働省では令和6年2月に飲酒に伴うリスクに関する知識の普及の推進を図るため、国民それぞれの状況に応じた適切な飲酒量・飲酒行動の判断に資する「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を作成しました。
アルコール健康障害の発生を防止するため、国民一人ひとりがアルコールに関連する問題への関心と理解を深め、自らの予防に必要な注意を払って不適切な飲酒を減らすために活用されることを目的としています。
飲酒量は純アルコール量(グラム)で把握すること、そして「飲酒量が少ないほど、飲酒によるリスクは少なくなる」ことを示しました。また飲酒のリスクを幅広く取り上げ、飲酒量と疾病別リスクを表にし、健康に配慮した飲酒の仕方まで丁寧に解説しています。
「節度ある適度な飲酒」(1日当たり20g程度/女性・高齢者・お酒に弱い人はより少なく)は、2000年にスタートした第一次健康日本21で周知目標とされ、自治体・関係機関だけでなく酒類業界も長年啓発に努めてきた「低リスク飲酒」の指標です。
最近は酒造メーカーでもホームページでビール類や缶チューハイの純アルコール量をグラム表記で開示する取り組みが始まっていますので、その情報を利用するのもよいでしょう。
以下の表は、飲酒ガイドラインに掲載されている「わが国での研究結果による疾病別リスクと飲酒量(純アルコール量)」を「特定非営利活動法人ASK」でわかりやすくまとめ直したものです。1日20g以下でもリスクが上る疾患が数々あるのがわかります。
高血圧や男性の食道がん、女性の出血性脳卒中などの場合は、たとえ少量であっても飲酒自体が発症リスクを上げてしまうこと、大腸がんの場合は、1日当たり20g程度(週150g)以上の量の飲酒を続けると発症の可能性が上がる等の結果を示した研究があります。飲酒による疾患への影響については個人差があります。従って、これらよりも少ない量の飲酒を心がければ、発症しないとまでは言えませんが、当該疾患にかかる可能性を減らすことができると考えられます。
「健康に配慮した飲酒の仕方」も解説しています。
- 自らの飲酒状況等を把握する
- あらかじめ量を決めて飲酒をする
- 飲酒前又は飲酒中に食事をとる
- 飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする(水などを混ぜてアルコール度数を低くして飲酒をする、少しずつ飲酒する、アルコールの入っていない飲み物を選ぶなど)
- 一週間のうち、飲酒をしない日を設ける
今回の飲酒ガイドラインでは「低リスク飲酒の明確な指標を示すことは困難」との理由で、「節度ある適度な飲酒」(1日当たり20g程度)使われませんでした。
「生活習慣病のリスクを高める量」(1日当たり男性40g以上、女性20g以上)。第三次健康日本21でも低減目標になっています。
「一時多量飲酒」(1回の飲酒機会で純アルコール摂取量60g以上)。飲酒ガイドラインでも「外傷の危険性も高めるものであり、避けるべきです」となっています。
「多量飲酒」(1日に60g超)。第一次健康日本21で示された指標で、飲酒運転との関連も深く、アルコール依存症にもつながるキケンな飲酒のあり方です。
また「20歳未満」「妊娠授乳中」「運転するとき」「服薬中」などは飲むのはNGです。
引用:厚生労働省 健康に配慮した飲酒に関するガイドラインについて
アルコールと肝臓病
アルコールの飲みすぎにより、いろいろな臓器に病気が起こりますが、なかでも肝臓病は最も高頻度で、かつ重篤にもなる病気です。
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、よほどのことがない限り音を上げない臓器です。したがって症状が出てからでは重篤化している可能性もあり、早期発見が大切です。そのためお酒を常習的に飲んでいる方は、症状がなくても定期的に血液検査を受けるようにしましょう。
肝臓病の早期発見には血液検査を行いますが、検査項目としてはAST(GOT)、ALT(GPT)、γ‐GTPがあります。γ‐GTPが高値の方はアルコールの飲みすぎが疑われますので、血液検査でIV型コラーゲンなどの線維化マーカーをチェックしてもらうと良いでしょう。
健康診断では下記の項目の肝機能検査を実施します。
基準値は
引用:公益社団法人日本人間ドック・予防医療学会 2024年度判定区分表
アルコール関連問題啓発週間とは
お酒は私たちの生活に豊かさと潤いを与えるものである一方、不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となります。更に、アルコール健康障害は、本人の健康の問題であるのみならず、飲酒運転、暴力、虐待、自殺などの様々な問題にも密接に関連します。
アルコール健康障害対策基本法では、こうしたアルコールに関連する問題への関心と理解を深めるため、毎年11月10日から16日までを「アルコール関連問題啓発週間」と定めています。
この期間中は、アルコール関連問題への関心と理解を深めるため、国・地方公共団体をはじめ様々な主体による啓発事業・広報活動が行われます。
厚生労働省 令和6年度における「アルコール関連問題啓発週間」の取組
アルコールの情報・相談先一覧
- 厚生労働省 eヘルスネット 飲酒
- 厚生労働省 保健所
- 全国精神保健福祉センター長会 精神保健福祉センター 精神保健福祉センターは、心の問題や病気について幅広く相談できる支援機関です。医師などの専門家が在籍し、飲酒で抱えている問題などの相談、情報提供などを行っています。
まとめ
厚生労働省は「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を作成、また純アルコール量と分解時間のチェックができる「アルコールウォッチ」をリリースしました。
飲酒は健康だけでなく、様々な影響を及ぼします。一人ひとりがアルコールのリスクを理解し、健康に配慮した飲酒を心がけましょう。