健康診断はなぜ必要?
年1回の定期健康診断。その健診結果を受け取ったとき、一喜一憂していませんか?
健康診断結果は、いわば健康の『通知表』みたいなもの。少しでも良い結果だと嬉しいものですよね。
さて、そんな健康診断ですが、なぜ受ける必要があるのか、ご存じでしょうか?
40歳以上の方を対象とした特定健診(特定保健指導)は、生活習慣病のリスクについて評価して、リスクの高い人については生活習慣の改善を促し、生活習慣病を予防することを目的としています。
生活習慣病のリスクが高い人を早期に発見し、食習慣の改善や適度な運動、飲酒・喫煙対策により、病気の発症や進行を予防するため、健康診断が行われているのです。
健康診断の目的については上記の通りですが、その各項目の結果値について、どんなことが分かるかご存知でしょうか。
各項目の意味することを理解して、さらなる健康づくりに活かしていただければと思います。
(基準とする数値は、公益社団法人日本人間ドック学会が公表している数値を参照しています。)
身体計測
BMI
体重(kg)]÷[身長(m)の2乗]で算出される、体格指数。痩せや肥満の傾向がわかり、25.0(kg/m2)を超えると生活習慣病のリスクが2倍以上になるとされています。
「18.4」以下だと「低体重」、「25.0」以上だと「肥満」とされます。
腹囲
メタボリックシンドロームを判定するための基準の一つ。
男性の場合「85.0」以上、女性の場合「90.0」以上だと異常とされます。
血圧測定
血圧
血圧の値によって心臓のポンプ機能が正常に働いているかや、高血圧・低血圧が判断されます。
食塩の過剰摂取・肥満・飲酒・運動不足・ストレス・遺伝的体質などにより上昇する場合と、
甲状腺や副腎などの病気により上昇する場合があります。
収縮期血圧が「130」以上、拡張期血圧が「85」以上で「要注意」、
収縮期血圧が「160」以上、拡張期血圧が「100」以上になると「異常」とされます。
視力検査
視力
病気ではないにも関わらず、裸眼視力が0.7を下回る場合には、近視や乱視が疑われます。
聴力検査
聴力
高音と低音がそれぞれ聞こえるか確認します。
1,000Hz、4,000Hzの音で調べ、30dB以下の大きさが聞こえれば正常です。
それ以上でしか聞こえない場合には、難聴や中耳炎などが疑われますが、
年齢とともに4000Hzの聴力は低下するため、高齢者では40dB程度聞こえれば異常なしと判定されることもあります。
血液検査(肝臓系)
総たんぱく
血液中の総たんぱくの量を表します。
主にアルブミンとγ-グロブリンで構成されています。
数値が低い場合は栄養障害、ネフローゼ症候群、がんなど、
高い場合は多発性骨髄腫、慢性炎症、脱水などが疑われます。
アルブミン
血液蛋白のうちで最も多く含まれるのがアルブミンです。
肝臓で合成されるため、肝機能の評価に用いられます。
数値が低い場合は、肝臓障害、栄養不足、ネフローゼ症候群などが疑われます。
AST(GOT)、 ALT(GPT)
AST(GOT)は、心臓、筋肉、肝臓に多く存在する酵素、ALT(GPT)は肝臓に多く存在する酵素です。
肝臓の病気をよく反映する数値といわれ、数値が高い場合は急性肝炎、慢性肝炎、脂肪肝、肝臓がん、アルコール性肝炎など、
AST(GOT)のみが高い場合は心筋梗塞、筋肉疾患などが疑われます。
γ-GTP
γ-GTP は、抗酸化物質グルタチオンを分解する酵素です。
肝臓や胆道に異常があると血液中の数値が上昇します。
数値が高い場合は、アルコール性肝障害、慢性肝炎、薬剤性肝障害などが疑われます。
ALP
ALP(アルカリホスファターゼ)は、肝臓、骨、腸、腎臓などの臓器に含まれている酵素です。
数値が高いと、胆道系の病気のほか、急性肝炎、慢性肝炎、肝硬変、肝臓がん、骨の病気などが疑われます。
なお、検査の数時間前に脂肪の多い食事をとると、異常がなくても検査値が高くなることがあります。
血液検査(腎臓系)
クレアチニン(Cr)
アミノ酸の一種であるクレアチンが代謝されたあとの老廃物です。筋肉量が多いほどその量も多くなるため、基準値に男女差があります。
クレアチニンは腎臓でろ過されて尿として体の外に排出されますが、
数値が高いと、腎臓機能の低下が疑われます。
尿酸(UA)
尿糸球体が老廃物を尿へ排出する能力を反映しており、クレアチニン値は筋肉量に影響を受けるため、血液中のクレアチニン値を年齢、性別で補正して算出された値です。
高い数値の場合は、高尿酸血症といい、高い状態が続くと、結晶として関節に蓄積され、突然関節痛を起こします(痛風発作)。
また、尿路結石も作られやすくなり、生活習慣病のリスクも高くなることが知られています。
eGFR(推定糸球体ろ過量)
尿酸は、たんぱく質の一種であるプリン体という物質が代謝された後の残りかすのようなものです。
クレアチニン値とは逆に、腎機能が低下すると値が低下します。
血液検査(脂質系)
総コレステロール(TC)
血液中にはコレステロールという脂質が含まれています。
ホルモンや細胞膜を作る上で大切なものですが、増えすぎると動脈硬化が進み、心筋梗塞などにつながります。
数値が高いと、動脈硬化、脂質代謝異常、甲状腺機能低下症、家族性高脂質異常症などが疑われ、低い場合は、栄養吸収障害、低βリポたんぱく血症、肝硬変などが疑われます。
HDL コレステロール
善玉コレステロールと呼ばれるものです。体内で不要となったコレステロールを回収します。
喫煙や運動不足のほか、栄養不足・体力の消耗が激しい状態でも低下します。
少ないと、脂質代謝異常や動脈硬化の危険性が高くなります。
LDL コレステロール
肝臓で作られたコレステロールを全身へ運ぶのがLDLで、悪玉コレステロールとよばれるものです。
LDL コレステロールが多すぎると血管壁に蓄積して動脈硬化を進行させ、心筋梗塞や脳梗塞を起こす危険性が高まります。
血液検査(糖代謝系)
血糖値(FPG)
糖とは血液中のブドウ糖のことで、エネルギー源として全身に利用されます。
測定された数値により、ブドウ糖がエネルギー源として適切に利用されているかがわかります。
数値が高い場合は、糖尿病、膵臓癌、ホルモン異常が疑われます。
HbA1c
ヘモグロビンにグルコースが結合した糖化ヘモグロビンが血液中に占める割合を示します。過去 1~2ヶ月の血糖の平均的な状態を反映するため、糖尿病のコントロールの状態がわかります。
また、空腹時血糖(FPG)が126mg/dLかつHbA1c(JDS)が6.1%以上(NGSPの場合は6.5%以上)なら糖尿病と判断します。
血液検査(血球系)
赤血球
赤血球は肺で取り入れた酸素を全身に運び、不要となった二酸化炭素を回収して肺へ送る役目を担っています。
赤血球の数が多すぎれば多血症、少なすぎれば貧血が疑われます。
血色素(Hb)(ヘモグロビン)
血色素とは赤血球に含まれるヘムたんぱく質で、酸素の運搬役を果たします。
減少している場合、鉄欠乏症貧血などが疑われます。
ヘマトクリット
血液全体に占める赤血球の割合をヘマトクリットといいます。 数値が低ければ鉄欠乏性貧血などが疑われ、高ければ多血症、脱水などが疑われます。
MCV・MCH・MCHC
MCVは赤血球の体積を、MCHは赤血球に含まれる血色素量を、MCHCは赤血球体積に対する血色素量の割合を示します。
MCVの数値が高いと、ビタミン B12欠乏性貧血、葉酸欠乏性貧血、過剰飲酒が疑われます。
低いと、鉄欠乏性貧血、慢性炎症にともなう貧血が疑われます。
白血球(WBC)
白血球は細菌などから体を守る働きをしています。
数値が高い場合は細菌感染症にかかっているか、炎症、腫瘍の存在が疑われますが、どこの部位で発生しているかまではわかりません。
少ない場合は、ウィルス感染症、薬物アレルギー、再生不良性貧血などが疑われます。
血小板数(PLT)
血小板は、出血したとき、その部分に粘着して出血を止める役割を果たしています。
数値が高い場合は血小板血症、鉄欠乏性貧血などが疑われ、
低い場合は再生不良性貧血などの骨髄での生産の低下、特発性血小板減少性紫斑病などの体の組織での亢進などが考えられます。
呼吸機能検査
%肺活量
ゆっくりと呼吸して、息を最後まで吐き切ったところから、胸いっぱい息を吸い込んだところまでの、空気を吸える量のことで、年齢や性別、身長などから算出される予測肺活量に対して、何%あるかを調べます。
79.9%以下では、肺の膨らみ方が悪いことを意味し、間質性肺炎や肺線維症などが疑われます。
1秒率
最大に息を吸い込んでから一気に吐き出すとき、最初の1秒間に何%の息を吐きだせるかを調べます。
69.9%以下では肺気腫や慢性気管支炎などが疑われます。
尿検査
糖
異常が認められれば、糖尿病が疑われます。
尿蛋白
腎機能が低下すると尿蛋白がふえます。運動時や発熱時など一時的で病的意義のない良性の場合もありますが、腎炎、糖尿病性腎症などが疑われます。
潜血
異常が認められれば、腎臓や尿管、膀胱などの病気が疑われます。
ただし、疲労などによって一時的に尿潜血が出ていることも考えられるので、
診断を確定させるためには複数回の検査が必要です。
便
便潜血
便に血が混ざっていることを表します。
陽性(+)の場合は、消化管の出血性の病気、大腸ポリープ、大腸がん、痔などが疑われます。
潜血
異常が認められれば、腎臓や尿管、膀胱などの病気が疑われます。
ただし、疲労などによって一時的に尿潜血が出ていることも考えられるので、
診断を確定させるためには複数回の検査が必要です。
便
便潜血
便に血が混ざっていることを表します。
陽性(+)の場合は、消化管の出血性の病気、大腸ポリープ、大腸がん、痔などが疑われます。
「健康診断はなぜ必要?」まとめ
生き生きと楽しく生活をするためには、健康とそれを維持する知識が必要です。
さまざまな病気の引き金となる生活習慣病を日頃から意識して、健康診断の結果を有効に活用しましょう。
特に、総合判定の欄には、検査で確認された異常から判断される各項目の判定や事後指導が記されていることがほとんどです。
その中でも最も大切なのが、この欄に記されている事後指導の記載です。再検査や受診の指示には必ず従うようにしましょう。