社員の健康診断を確実に受けてもらうことは、健康経営に取り組む企業にとって欠かせない要素です。しかし現場では、「案内したのに申し込まない」「当日に休んで受けられなかった」「毎年未受診のままの人がいる」といった悩みが後を絶ちません。
実際、これらの課題は決して珍しいものではなく、多くの企業で共通して見られる“よくあること”です。
健診を受けてもらえない背景にあるもの
厚生労働省の調査によると、定期健康診断を実施しなかった事業所の理由として最も多いのは、「日程や時間の確保が難しい(43.4%)」 という声でした。
少人数の職場では「誰かが抜けると業務が止まる」こともあり、受診調整そのものが大きな負担になりやすいのです。
次いで多いのが、
健診機関が見つからない・予約が取れない(14.6%)
費用負担が重い(10.6%)
といった運用面の悩み。
また
健診事務の負荷が大きい(7.6%)
必要性を感じていない(11.2%)
など、事務作業や意識面の課題も浮かび上がっています

健診業務は“多工程” 知らぬ間に負荷がかかる
案内文の作成、予約手続き、受診リマインド、未受診者への声かけ、受診後の結果回収や記録…。
積み重なると担当者の負担は相応に大きくなります。
さらに未受診者へのフォローでは、
「忙しくて時間が取れない」「健診が苦手」「後で行くつもりだった」
といった個別の事情への対応も必要になり、心理的な負荷も無視できません。
業務を“仕組み”で支え、担当者の負担を軽減する
担当者だけで全ての作業をこなすのには限界があります。
近年増えているのが、健康管理システムを活用して業務を省力化する企業の取り組みです。
たとえばシステム化すると、こんなメリットがあります
- 健診案内・リマインドを自動配信できる
→ 手動メール・紙連絡の手間を大幅削減 - 予約状況や未受診者をリアルタイムに把握できる
→ Excel管理が不要に - 健診結果が自動で集約され、紙回収や転記作業が不要
- 未受診者へのフォローをシステム内で簡単に記録できる
→ 企業側の“追跡管理”が楽になる - 従業員もスマホで案内確認や予約ができる
→ 受診率の向上につながる
さらに、LINE公式アカウントや社内チャットと連携することで、「ちょっと聞きたい」「予約方法が分からない」といった質問にスムーズに対応できます。
健診結果データが蓄積されることで、産業医や保健師との連携もしやすくなり、健康相談や生活習慣改善支援など、アフターフォローにも生かせます。
システムと運用の工夫を組み合わせることで、“受診勧奨の仕組み化”を進めることが可能になります。
受診率を左右するのは“受けやすい環境”づくり
受診勧奨において最も効果が高いのは、「受診しやすい環境」を整えることです。
企業として健康診断を重要視していることを明確に示し、業務時間内での受診を認める、健診費用を全額会社負担であると周知する、といったルールづくりは大きな効果があります。
「仕事が忙しいから行けない」を減らすには、会社が“時間の確保”を後押しすることが不可欠です。
予約の負担を減らせば受診率は一気に上がる
次に重要なのが、予約・手続きの簡素化です。
特に健康管理システムを利用している企業では、オンラインで空き枠確認・予約ができるようにするだけで予約率が大きく改善します。
システムからの自動リマインド通知(メール)を活用すれば、担当者が個別に連絡をする手間も減り、効率的に受診を促すことができます。
未受診者への寄り添いの工夫
受診勧奨では、まだ受診していない従業員に対しても「責める」のではなく寄り添う姿勢が重要です。
たとえば、「日程調整で困っていませんか」「体調や通院の都合で受診が難しい場合は相談してください」といった一言を添えるだけでも安心感が生まれます。
管理職や担当者が個別に声をかけることで、心理的ハードルを下げ、受診に前向きになってもらうことができます。
この寄り添いがあるかないかで、受診率だけでなく従業員の信頼感や健康施策への意識も変わります。
健康診断の受診率向上が企業にもたらすメリット
受診率が上がると、企業には多くの恩恵があります。
第一に、重大な健康リスクを早期に発見し、長期休職や急な離脱を防ぐことができます。
第二に、「健康経営優良法人」などの認定を目指す企業にとっては、健康診断の受診率は重要な評価項目です。企業ブランドや採用力の向上にもつながります。
第三に、従業員の健康状態が改善すれば、日々のパフォーマンスも向上し、プレゼンティーイズムの低下にも寄与します。
健診勧奨は「義務」ではなく「文化づくり」
健康診断は法律上の義務であると同時に、社員を大切にする企業文化の象徴でもあります。
社員の健康意識を高め、会社全体で「健康を大切にする空気」を作ることが、長期的には離職防止や生産性向上につながります。
特に中小企業では、社員一人ひとりの存在が貴重です。
誰かが体調を崩すと業務への影響も大きくなるため、全員が受診できる体制づくりは不可欠です。
経営層のリーダーシップ、担当者の丁寧な声かけ、社員同士の声の連鎖、
この3つがそろうことで、健康診断の受診率は確実に上がります。
さらに、健康管理システムを活用した効率的な予約管理により、管理者・社員双方の負担を減らし、受診を自然な習慣にすることが可能です。
まとめ
健康診断の受診勧奨は、担当者が一人で頑張るものではなく、仕組みとして組み込むことでスムーズに進む業務です。
「受けやすい環境」「簡単な予約」「未受診者への寄り添い」がそろえば、受診率は自然と上向き、企業と従業員双方のメリットが広がります。
健康は大切だと分かっていても、忙しさの中で後回しにしてしまうのがよくあることです。
だからこそ、企業の“ひと押し”と寄り添いが価値を持ちます。
年に一度の健康診断を、義務で終わらせるのではなく、従業員を守る大切な機会として活かすために。まずは、できるところから仕組みと寄り添いを取り入れてみてはいかがでしょうか。

