産業保健に関わる組織
産業保健には様々な組織が関わっています。
産業保健活動は多職種、組織が連携して取り組むことで効率的に活動を進めることができます。
産業保健に関わる組織について知り、適切に連携を進めることで事業場の産業保健活動の質の向上につなげましょう。
産業保健活動を支援する外部機関
必要に応じて外部機関と連携をとることで産業保健活動を円滑に進めることができます。外部機関の役割と利用の仕方を理解し、産業保健活動を更に推進していきましょう。外部機関のなかで健康保険組合、保健所・保健センター、労働衛生機関、民間の外部支援機関、産業保健総合支援センター、地域産業保健センターの主な業務を紹介します。
健康保険組合
健康保険組合は、健康保険の仕事を行う公法人です。
日本のサラリーマンとその家族を中心に約3,000万人が加入しています。
健康保険組合(通称・健保組合)では、サラリーマン(被保険者)の皆さんと勤務先から毎月いただいている健康保険料をもとに「保険給付」と「保健事業」という2つの大きな仕事をしています。
「保険給付」は健保組合の最も大切な仕事で、被保険者とその家族の皆さんが病気やケガをしたときの医療費の支払いや、出産・死亡・休職などのときに手当金を支給する仕事です。
例えば病気やケガなどで病院にかかった場合、皆さんは医療費のうち3割を医療機関の窓口で支払います。残りの7割は審査支払機関を通じて健保組合が支払いをするという仕組みです。
また、病気やケガの治療以外でも、いざというときの経済的負担を軽減するために、出産や死亡、長期の休業に生活保障としての傷病手当金の給付なども行っています。
健保組合の仕事のもう1つの大きな柱である「保健事業」は、被保険者とその家族の皆さんが健康な生活を送れるように、病気の予防や早期発見の手助けをしたり、健康増進のためのさまざまな事業を行う仕事です。「保険給付」は病気になった時のサポートですが、「保健事業」は病気にならないような健康づくりのサポートといえます。
近年ではそれぞれの健保組合の特徴に応じた保健事業が盛んになってきています。
健康診断の結果やレセプトなどの健康や医療に関する情報は、2008年の特定健診・特定保健指導制度の導入やレセプトの電子化にともない、IT化された情報をもとにさまざまな分析が可能となりました。
健保組合がこうした健康や医療に関する情報を分析して、加入者の健康状態に即したより効果的・効率的に行なう保健事業をデータヘルスと呼んでいます。このデータヘルスにより、戦略的に保健事業を企画立案、実施、評価し、いわゆるPDCAサイクルを適用して効果的な保健事業を進めることが期待されています。
また健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定では、保険者が実施する健康宣言事業に参加したうえで健康宣言を行うことが必須と示されています。
保健所・保健センター
①保健所
各都道府県や政令指定都市・中核市など政令で定められている市に設置されています。各地域の公衆衛生を担う役割があり、広域的に専門的な保健サービスを提供している公的機関です。
②保健センター
各市町村に設置されており、地域住民の健康維持・増進を目的とし、健康相談、健康診査、 保健指導を中心とした保健事業が行われています。保健所より身近な公的機関であり、個別ケースの対応がきめ細かに行われています。
産業保健活動に関しては、自治体の保健師による健康教室の開催や健康指導の実施など、保健センターが実施している地域保健に関する事業を、事業場における健康管理活動として活用することができます。
労働衛生機関
労働衛生機関には、作業環境測定機関・健康診断実施機関・健康保持増進サービス機関があり、それらをすべて提供している総合的な機関もあります。
健診や作業環境測定の実施だけではなく、その結果を踏まえて、保健師や衛生工学衛生管理者などの専門職が対応してくれる場合もあるため、専門職を雇用していない事業場でも、労働衛生機関を活用することで専門職による支援を受けることができます。
民間の外部支援機関 (労働衛生機関を除く)
民間の外部支援機関には、ストレスチェック等を実施するメンタルヘルス支援相談機関など、 産業保健サービスを提供している様々な機関があります。
事業場内の産業保健スタッフ・人材では解決できない場合、有効活用することで、産業保健活動全体の質を上げることができます。
民間の外部支援機関に、事業場へのコンサルティング等を担ってもらう場合、事業場の産業保健チームの構成員として活動してもらうことが、当該事業場の産業保健活動の成果に結びつきやくなります。
産業保健総合支援センター(全国47か所)
産業保健活動を支援する組織のなかで産業保健総合支援センター及びその地域窓口(地域産業保健センター)では、事業者の産業保健活動を支援しています。利用料は無料です。
主な業務としては、産業保健関係者に対する専門的研修等、産業保健関係者からの専門相談対応、メンタルヘルス対策の普及促進のための個別訪問支援、治療と仕事の両立支援、産業保健に関する情報提供、広報啓発、事業主、労働者に対する啓発セミナーがあります。
地域産業保健センター(全国350か所)
全国の労働基準監督署の管轄区域ごとに設置されています。利用料は無料です。
主な業務としては、労働者の健康管理(メンタルヘルス含む)にかかる相談、健康診断の結果についての医師からの意見聴取、「長時間労働者」や「ストレスチェックに係る高ストレス者」に対する面接指導、個別訪問による産業保健指導があります。
労働者が50人未満の事業所では産業医の選任義務がないため法令で定められた「健康診断の結果についての医師からの意見聴取」「長時間労働者、高ストレス者の面接指導」には地域産業保健センターを利用するなどして法令遵守をしていきましょう。
まとめ
職場における健康課題は多様化しており、現場のニーズに対応した産業保健活動が求められています。
事業者は法令遵守をすることで企業を守り、健康経営を進めるうえでの基盤となります。
外部機関とも連携して産業保健活動を推進していきましょう。