厚生労働省では、毎年3月1日から3月8日までを「女性の健康週間」と定め、女性の健康づくりを国民運動として展開しています。
3月8日は1997 年の国連総会において、女性の権利と平和を目指す「国際女性デー」と決議され、世界各国で記念行事や催しが開催されます。
女性の勤続年数は、確実にのびています。しかし、女性は、ライフステージごとに様々な健康課題があります。 月経・妊娠・出産・更年期と働き続けるためには、これらに適切に対応し、体調不良による生産性の低下や離職を防ぎ、長く活躍できる環境を整えることが重要です。
厚生労働省 「女性の健康週間」の実施について(令和7年1月22日)
女性特有の健康課題による経済損失
女性特有の健康課題は、業務効率や就業継続にも大きな影響を与えており、経営者が十分に理解し、職場環境などを適切に整備することで改善が期待される重点的テーマといえます。
女性特有の健康課題による労働損失等の経済損失は、社会全体で年間約3.4兆円と推計されています。
引用:経済産業省 女性特有の健康課題による経済損失の試算と健康経営の必要性について

女性特有の健康課題により仕事の生産性が低下したり、昇進や責任の重い仕事に就くことや自分の望むキャリアをあきらめる女性がいることは、女性だけではなく企業にとっても損失です。
女性の健康課題に対応し、女性が働きやすい職場環境の整備を進めることが生産性向上や企業業績向上に結びつくと考えられています。
女性の健康支援のメリット
健康課題の有無にかかわらず、女性が妊娠・出産、育児などライフイベントを通じて働き続け、その能力を発揮するためにも女性の健康支援が大切です。
「健康に自信がある女性ほど長く働き続ける自信がある」、「健康に自信がある女性ほど離職検討の経験が少ない」といった調査結果もあり、健康を支援することで、女性の離職を防ぎ、仕事に対する自信やモチベーションを高める効果が期待されます。
女性特有の健康課題の解消に向けては、女性従業員側の支援ニーズが大きい一方、企業側が ”ニーズを把握しづらく、何をすべきか分からない” というミスマッチが生じています。
個々人の状況についてより精緻に実態を把握し、健康課題を抱える従業員に対しより直接的な支援を提供するとともに、その効果や意義を、経営としてモニタリングし続けることで、より質の高い健康経営の実践が可能になります。

企業が取り組む女性の健康課題への対応
月経・PMS(月経前症候群)への対応
・生理休暇の取得促進(目的を限定しない休暇制度を導入したり、「健康休暇」など制度のネーミングを工夫)
健診コラム:生理休暇の制度やすべき対応を理解しよう
・フレックスタイム制やテレワークの活用
・職場環境の配慮(不調時に横になれる休憩スペースの整備、冷えに対処した環境整備、快適なトイレ環境、生理用品の設置など)
妊娠・出産・育児と仕事の両立支援
・産休・育休制度の充実と復職支援
・育児支援(時短勤務、在宅勤務の導入)
・不妊治療支援(通院のための柔軟な勤務制度)
更年期対策
・更年期の症状に関する社内啓発
・相談窓口の設置や医療機関との連携
・柔軟な働き方の推奨
女性特有の健康診断の充実
・乳がん・子宮頸がん検診の補助や受診率向上策(勤務時間に検診が受けられる仕組みなど)
・健診結果に基づいたフォローアップ体制の整備
メンタルヘルス対策
・女性特有のストレス要因の理解と対策
・社内カウンセリング制度やメンタルヘルス研修の実施
参考:厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト 企業取組事例
女性の健康支援取組のポイント
リテラシー向上のための取組(経営者・管理職・従業員ともに)
リテラシーとは、知識を適切に理解し活用することを示します。
女性の健康についての理解を、経営者、管理職、従業員共に深めることが大事です。
理解の促進は、健康問題で悩む女性とサポートする職場の同僚の間で前向きに助け合える職場環境を作り、心理的安全性を高め、職場全体の生産性向上にもつながります。
女性の健康についての理解は、男女ともに深めていきましょう。
女性自身もヘルスリテラシーを高めることで、健康課題に対処する力をつけ、より生き生きと働けるようになります。
事例: 男女対象「女性の健康セミナー」の実施
女性がヘルスリテラシーを高めるためのセミナーの実施
リーフレットの配布
女性の健康コラムを社内サイトに掲載 など
健康に配慮した職場環境の整備
妊娠中・出産後も働き続ける女性が増加し、活躍する女性が増えています。
しかし、女性は一生を通じてホルモンの激しい変化があるため、心身に様々な影響を受けます。
女性が不調時に休めるといった女性の健康に配慮した職場環境や冷えに対処した職場環境、受動喫煙対策が女性活躍を促進します。
女性の健康課題を相談できる体制づくり
気軽に相談できる環境があることで、突然の休職・離職を防ぐことができます。
健康の問題を抱えながら働く状態の改善につながり、生産性の低下も防ぎます。
また、女性の健康に関する社内の課題を吸い上げることで、どのような対策が必要か、検討することができます。
事例: 産業医・カウンセラーの配置
女性相談員の育成
健康相談窓口の設置 など
メディクラ健康管理では、産業医や保健師の面談スケジュールの管理や従業員の健康情報を一元管理することができます
柔軟な働き方の実現(どんな働き方でも能力を発揮できる)
不調時の休養、治療・通院、検診と仕事を両立するためにも、フレックス、時差出勤、テレワークといった柔軟な働き方ができることはとても大事です。
柔軟な働き方ができることは、女性だけでなく管理職や男性も含めた職場全体の働き方改革につながります。
人材流出を防ぐだけでなく、優秀な人材の獲得も期待できます。
また、制度の整備だけでなく、制度を利用しやすくする工夫も大切です。
生理や不妊治療のための休暇申請に抵抗感を感じる人もいます。休暇申請がしやすいよう、目的を限定しない休暇制度を導入したり、制度のネーミングを工夫したりするのも良い方法です。
「女性の健康週間」の実施について
毎年3月1日から8日までを「女性の健康週間」として国及び地方公共団体、関係団体等、社会全体が一体となり、各種の啓発事業及び行事を展開することで、女性が生涯を通じて健康で明るく、充実した日々を自立して過ごすことを総合的に支援しています。
令和6年度から開始した健康日本21(第3次)の基本指針においても、新たに女性の健康の視点を取り入れ、ライフコースアプローチを踏まえた健康づくりとして「女性の健康」を新規に項目立てし、「骨粗鬆症検査受診率の向上」を新たに目標に設定するとともに、「女性の健康週間」の実施を明記しました。
また、令和7年度よりスマート・ライフ・プロジェクトのテーマに「女性の健康」を追加し、女性の健康に関する知識の向上と、女性を取り巻く健康課題に対する社会的関心の喚起を図り、女性に特有の健康課題への取組を進めていくこととしています。
参考:厚生労働省 健康日本21(第3次)
国の取組
厚生労働省では、「女性の健康週間」の実施にあわせ、スマート・ライフ・プロジェクト公式サイト内に以下のコンテンツを公開中です。
○骨粗しょう症予防 善方裕美先生と学ぶ「骨活のすすめ」
URL:https://www.smartlife.mhlw.go.jp/event/honekatsu/
(「スマート・ライフ・プロジェクト」公式サイト内)
○元体操選手 田中理恵さん・能瀬先生と一緒に考える
~自分のカラダと向き合う、適正体重の大切さ~
URL:https://www.smartlife.mhlw.go.jp/event/womens_health/2024/
(「スマート・ライフ・プロジェクト」公式サイト内)
女性の健康についての情報提供サイト「女性の健康推進室ヘルスケアラボ」
すべての女性の健康を支援するために厚生労働省科学研究費補助金により研究班が作成し、情報発信を行っています。
ライフステージ別女性の健康ガイド、キーワードや症状から病気を調べる、セルフチェック、マタニティトラブルQ&Aなど女性のからだとこころについての情報が掲載されています。
厚生労働省 女性の健康促進室ヘルスケアラボ

まとめ
これまで、企業の健康支援は、生活習慣病予防としてのメタボリックシンドローム対策など、どちらかというと男性基準の対策が中心でした。
職場において働く女性が増加し、その活躍が一層期待される今、企業にとって女性従業員の健康支援は重要な課題となりつつあります。
女性の健康支援は、企業の持続可能な成長と生産性向上に直結する重要な戦略といえます。
女性が働きやすい職場は、男女ともに働きやすい職場につながります。女性の健康支援を通じて、誰もが健康で生き生きと働くことのできる職場づくりに、できそうなことからひとつずつ進めていきましょう。
引用:厚生労働省 働く女性の心とからだの応援サイト