助成金を利用して健康経営の推進を(団体経由産業保健活動推進助成金)

健康経営
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企業にとって健康経営の推進が不可欠になってきています。

健康経営の取組をしたくても費用やマンパワーが課題となって実践に取り組めないことはないでしょうか。

2024年11月現在、中小企業では、商工会や同業組合などの小規模事業場の産業保健活動を支援する「団体経由産業保健活動推進助成金」、また高齢者を含む労働者が安心して安全に働くことができるよう健康保持増進のための取組に対して補助する「エイジフレンドリー補助金」が利用できます。

今回は「団体経由産業保健活動推進助成金」について解説します。

産業保健の指標を国が設定(第14次労働災害防止計画)

2023年4月1日からの5か年計画である第14次労働災害防止計画(労働安全衛生法(第6条)に基づき、労働災害の防止に関し基本となる目標、重点課題等を厚生労働大臣が定める5か年計画)では、事業者の安全衛生対策の促進と社会的に評価される環境の整備を図っていくこと、厳しい経営環境等さまざまな事情があったとしても、安全衛生対策に取り組むことが事業者の経営や人材確保・育成の観点からもプラスであると周知することが方向性として、アウトプット指標とアウトカム指標が示されました。

そして8つの重点対策があげられ、その中に「労働者の健康確保対策の推進(メンタルヘルス、過重労働、産業保健活動)」があげられました。

「労働者の健康確保対策の推進」で事業者に取り組んでもらいたいこ

  1. メンタルヘルス対策 ストレスチェックの実施にとどまらず、ストレスチェックの結果をもとに集団分析を行い、職場環境の改善を実施。職場のハラスメント防止対策に取り組む。
  2. 過重労働対策 長時間労働者への医師による面接指導や、産業保健スタッフ(保健師、看護師等)による相談支援を受けるよう勧奨する。
  3. 産業保健活動の推進 事業場の状況に応じて必要な産業保健活動の実施。治療と仕事の両立において、支援を必要とする労働者が申し出しやすいよう、職場環境の整備や両立支援コーディネーターを活用した円滑な支援を図る。

アウトプット指標(2027年まで、一部2025年まで)

  • メンタルヘルス対策に取り組む事業場を80%
  • 50人未満の小規模事業場のストレスチェック実施の割合を50%以上
  • 必要な産業保健サービスを提供している事業場を80%以上
  • 企業の年次有給休暇の取得率を70%以上(2025年)
  • 勤務間インターバル制度を導入している企業を15%以上(2025年まで)

事業者がアウトプット指標を達成した結果として期待される事項をアウトカム指標として定めました。

  • 自分の仕事や職業生活に関することで強い不安、悩み、ストレスがあるとする労働者を50%未満(2027年まで)
  • 週労働時間40時間以上である雇用者のうち、週労働時間60時間以上の雇用者を5%以下(2025年まで)

職場における労働者の健康保持増進に関する課題については、メンタルヘルスや働き方改革への対応、労働者の高年齢化や女性の就業率の上昇に伴う健康課題への対応、治療と仕事の両立支援、コロナ禍におけるテレワークの拡大や化学物質の自律的な管理への対応等、多様化しており、現場のニーズの変化に対応した産業保健体制や産業保健活動の見直しが必要です。

また、法令に基づく産業保健体制が整備されているものの、産業保健活動が効果的に行われず、労働者の健康保持増進が有効に図られていない事例や、保健事業を実施する保険者との連携が十分に行われていない事例もあることから、より効果的に産業保健活動の推進を図る必要があります。

さらに、産業医の選任義務がない、労働者数50人未満の事業場においては、産業保健活動が低調な傾向にあり、地域医療・保健との連携等も含め、こうした小規模事業場における産業保健体制の確保と活動の推進が必要となっています。 労働力人口における通院者の割合が増加を続ける(平成31年:36.8%(国民生活基礎調査))一方で、治療と仕事を両立できる取組(通院や体調等の状況に合わせた配慮、措置の検討、両立支援に関する制度の整備等)を行っている事業場の割合は41.1%(令和3年労働安全衛生調査(実態調査))であり、事業場規模が小さいほど、その割合も小さい。疾患を抱えながら働きたいと希望する労働者が、安心・安全に就業を継続でき、かつ、事業者の継続的な人材の確保、労働者の安心感やモチベーションの向上による人材の定着、生産性の向上につながるよう、治療と仕事の両立支援の推進が必要です。 このような状況を踏まえ、事業者には、法令で定める健康確保措置に加え、それぞれの事業場の特性に応じて優先的に対応すべき健康課題を検討し、必要な産業保健サービスを提供することが求められています。

これらのメンタルヘルス対策、過重労働対策、産業保健活動の支援事業として産業保健総合支援センター、地域産業保健センター、「団体経由産業保健活動推進助成金」があります。

上記支援事業をうまく利用して産業保健活動を推進していきましょう。

引用:厚生労働省 労働災害防止計画について

団体経由産業保健活動推進助成金とは

「団体経由産業保健活動推進助成金」は小規模事業場等の産業保健活動を支援するものです。

商工会や同業組合などの小規模事業場の活動支援をする事業者団体が対象となります。

事業所ごとの申請はできません。

助成金の審査等は独立行政法人労働者健康安全機構が行っています。

助成対象:事業主団体等や労災保険の特別加入団体

助成対象事業:傘下の中小企業等や個人事業主に対して行う、産業保健サービス

(健康診断結果の意見聴取やストレスチェック後の職場環境改善支援等)

助成額:上記のサービスに要する費用及びサービス提供に係る事務費用の90%(上限500万円

都道府県事業主団体は1,000万円)(1団体につき年度ごとに1回限り)

引用:独立行政法人労働者健康安全機構助成金

令和5年より下記の産業保健関係助成金は廃止になりました。

  • 小規模事業場産業医活動助成金
  • ストレスチェック助成金
  • 職場環境改善計画助成金
  • 心の健康づくり計画助成金
  • 治療と仕事の両立支援助成金
  • 副業・兼業労働者の健康診断助成金
  • 事業場における労働者の健康保持増進計画助成金

今までの産業保健関係助成金との違いは

  • [申請の仕組み]事後に支給申請のみを行う事前に計画提出・承認してから支給申請を行う
  • [申請から支給までの期間]事業場での取組終了後6か月以内の申請など、支給手続きが完了するまでに年度をまたぐ→年度内に支給が終了するスケジュールとする(計画提出を12月末まで、支給申請を翌年2月末まで)
  • [助成対象]個々の事業者中小企業の各種活動を支援する団体
  • [補助率]実費全額助成(上限あり)又は一律助成、一度限り総事業費の9/10助成(上限500万円、都道府県事業主団体は1,000万円)、原則、各年度1回限り、毎年度申請可能
  • [補助対象となる取組]小規模を含む事業場における個々の取組支援団体による、事業場への支援の取組及び傘下の事業場への支援するための事務費用(事務費用は上限あり)

あらかじめ計画書を提出し承認を受けてから支給申請を行えるため助成金を期待して事業を実施することができるようになりました。また個々の事業場への経済的・事務的負担の軽減、毎年度の助成金申請が可能になり継続した産業保健活動が期待できます。支援団体の事務費用も補助対象となりより多くの事業場の産業保健活動を支援できるようになりました。

団体経由産業保健活動推進助成金対象事業

第14次労働災害防止計画において中小企業にも、メンタルヘルス対策、過重労働対策、産業保健の推進に取り組むことが求められています。

以下の事業は助成対象となります。

健康診断で異常の所見があった労働者について、健康を保持するために必要な措置について、医師から意見を聴いていますか?

労働安全衛生法は、事業者に対して健康診断で異常所見があった労働者について医師などから聴取した意見を勘案して就業上の措置や作業環境の改善を実施することを義務づけています。

産業医を選任していますか?

労働安全衛生法は、労働者数50人以上の規模の事業場に対して、産業医を選任して職場巡視などの業務を実施するための権限を与えることを義務づけています。(労働安全衛生法13条) 50人未満の事業場でも、できれば産業医を選任することが望ましいでしょう。 産業医は、健康診断などの健康管理、衛生教育などを行うとともに職場巡視なども行い、必要に応じて事業者に対して勧告や助言・指導を行うことのできる医師です。 産業医を選任することができない場合は地域産業保健センターで産業保健サービスを受けることができます。

産業医や保健師が、健康診断結果に異常な所見がある労働者に対して保健指導を行っていますか?

労働安全衛生法は、事業者に対して、健康診断の結果に異常な所見があるなど特に健康の保持に努める必要がある労働者を対象とした、医師又は保健師による保健指導の実施に努めることを義務(努力義務)づけています。(労働安全衛生法66条の7)

労働者に対する健康教育、健康相談などを計画的に実施していますか?

労働安全衛生法は、事業者に対して、労働者への健康教育や健康相談などの労働者の健康の保持増進のために必要な措置の、継続的かつ計画的な実施に努めることを義務(努力義務)づけています。また、労働者も、この措置を利用して、健康の保持増進に努めなければならないとされています。 (労働安全衛生法69条)

事業場として産業医、保健師と契約をして産業保健サービスの提供を受けることもできますが、費用面での負担が大きくなります。

事業主団体等で産業医や保健師と契約をする、また健康づくりのセミナーを実施するなどの費用の9/10(上限500万円)が団体経由産業保健活動推進助成金では助成されることになります。

産業保健サービスで助成対象となるのは以下の1~7です

  1. 医師、⻭科医師による健康診断結果の意⾒聴取
  2. 医師、保健師による保健指導
  3. 医師による⾯接指導・意⾒聴取
  4. 医師、保健師、歯科医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師、産業カウンセラー、臨床心理士その他の産業保健スタッフによる労働者等に対する健康相談対応
  5. 医師、保健師、看護師、社会保険労務⼠、両⽴⽀援コーディネーター等による治療と仕事の両⽴⽀援(相談対応、医療機関等との連携、就業可否に関する意見(医師に限る。)、就業上の措置や配慮等の検討の支援、環境整備支援等)
  6. 医師、保健師、看護師等による職場環境改善支援(ストレスチェック実施後の集団分析結果を活用した改善支援を含む。)
  7. 医師、保健師、看護師等による健康教育研修、事業者と管理者向けの産業保健に関する周知啓発(いずれも健康経営に係るものを含む。)

健康診断費用、ストレスチェックや集団分析については対象外となります。

まとめ

労働者の健康確保において、産業医の選任義務のない小規模事業場における体制確保や取組の推進が大きな課題となっています。これらの事業場は全体の 96%を占めており、小規模事業場における健康確保対策の推進には、対象となる団体では「団体経由産業保健活動推進助成金」を利用することができます。

「団体経由産業保健活動推進助成金」を活用することで、労働者の健康状態改善、業務効率の向上、職場のメンタルヘルス向上などが期待できます。産業保健体制の強化、産業保健サービスの充実は企業の健康経営に繋がります。


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